大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(う)750号 判決

被告人 旭段ボール株式会社 他三名

〔抄 録〕

論旨一は、本件は労働安全衛生規則第六九条の違反をもつて論ずべきであるのに、原判決が同規則第六三条第一項違反だとしたのは法令の適用を誤つたものだというのである。しかしながら、同規則第六九条は、動力伝導装置又は動力によつて運転する車軸に附属する止め金具類は、埋頭型のものを使用するか、又はこれに適当な覆を設けることを義務づけているのであり、これに対して同規則第六三条第一項は、床面から一八メートル以内にある動力伝導装置の車軸で接触の危険があるものには囲、覆又はスリーブを設けることを義務づけているのであつて、この二つの義務は、同じく動力伝導装置の車軸に関するものではあつても、それぞれ独立した別個のもので、その一を履行すれば他を履行しないでもよいというものではない。いいかえれば、この二つの義務の違反は法律上併立しうるものであつて、かりに所論のように別に同規則第六九条の違反が存在したとしても、そのために当然同規則第六三条第一項の違反が成立しなくなるわけではないのである。しかも、この二種の違反は行為を異にし、公訴事実としても別個のものだと解されるから、公訴事実が同規則第六三条第一項の違反を対象としている本件において、原判決が止め金具に関する同規則第六九条違反を問題にしなかつたのは当然であつて、論旨は理由がないといわなければならない。

論旨二は、本件の動力伝導装置の車軸は労働安全衛生規則第六三条第一項にいう「接触の危険があるもの」にあたらないと主張するのである。そこで、一件記録を検討し、かつ当審における検証の結果をもあわせて考えてみると、なるほど本件の車軸が工員の一般の通行はもとより平常の作業のためにもまたぐ必要のない場所に設置されていることは所論のとおりこれを認めることができる。しかしながら、たとえば同条第二項が「水平車軸で、作業若しくは通行のためこれをまたぐもの」に限つて覆又は踏切橋の設置を義務づけており、他方において同規則第八〇条が木工用帯のこの盤の刃及び動輪について無条件に囲又は覆の設置を規定しているのに対し、本件で問題になつている第六三条第一項は「接触の危険があるもの」について囲などの設置を命じていることから考えると、同項の車軸については、その存在自体がつねに当然接触による事故発生の危険を伴うものとはいえないので、具体的な状況上接触の危険がある場合にだけ囲などの設置が要求されていると解すべきであるが、他面その危険は、たとえば人が作業又は通行のためこれをまたがなければならない場合のような高度の危険である必要はなく、およそ人がこれに接触するある程度の危険が存することをもつて足りると解すべきである。論旨は、同項にいう車軸は「その上で作業する必要がある区域に架け渡された車軸」と「その下を通る必要ある区域に架け渡された車軸」を指すのだというけれども、右は独自の所論であつて採用することはできない。ところで、本件の車軸は、前述したように作業又は通行のためにこれをまたぐ必要はないし、その他これに接触する危険の度が非常に高かつたとはいえないが、それにしてもその附近でカツターの作業が常時行なわれているのであるし、これに近づこうと思えば自由に近づくことのできる状態にあつたのであり、現に回り道の労を省いてこれをまたごうとしたためこれに接触して事故を起こした従業員もあつたことから判断すると、やはり接触の危険がある程度なかつたとはいえず、右の車軸は同規則第六三条第一項にいう接触の危険がある車軸に該当するものであつたといわなければならない。したがつて、原判決が同項の違反があると認め、労働基準法第四二条に違反するとしたのは正当であつて、法令の適用の誤を主張する論旨は理由がない。

(新関 中野 伊東)

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